2018年11月9日金曜日

ディルイーヤ(Dir'aiyah) 世界遺産



少しだけと思って昼寝をすると、あっという間にコンシェルジュにお願いしていたタクシーの到着時間に。さすがに疲労を感じながらも、折角だからと身支度をし、ロビーに下りていくと、今度はエジプトから来ているという陽気そうな運転手。英語は大丈夫という割りに、行き先を伝えてもなんだか不安な表情に、こちらが不安になり、日本から持ってきたガイドブックを渡して、ビジュアルで伝えることに。

そして向かったのはリヤドの西、20キロの場所に位置するディルイーヤ(Dir'aiyah)という小さな都市。現在のサウジアラビアの元となるサウード王国。その王国は途中オスマン帝国との間で展開されたオスマン・サウジ戦争によって敗れ、その後復興したために、前期を第一次サウード王国、後期を第二次サウード王国と呼ばれるようであるが、その第一次サウード王国の首都であったのがこのディルイーヤ(Dir'aiyah) ということらしい。

1740年代に都市化された場所らしいが、かなりの規模を誇っており、その中でも中心であったトライフ地区には、当時の建築様式であるナジ建築(Najd Architecture)の遺跡が多く残るいうことで、2010年には文化遺産としてユネスコの世界遺産に登録されている場所という。

この国の、そして地域の建築にかかわることになるかも知れない身としては、これはなんとしても見ておきたい場所であるということで、ガイドブックに掲載されている写真を手がかりに運転手に説明するのだが、世界遺産に登録されるほどの場所であるが、あまりピンときていない姿を見ると、この国において観光というものがどれほど浸透していないかと実感しながら、それらしきところに到着する。

電話番号を教えられ、「見終えたら電話してくれ」と言ってくるので、「いやいや、折角だから一緒に行こう。車は少し離れた駐車場に停めて、そこから歩けばいいからさ」と説得し、こんな状況もわからないところに一人で野放しされるのだけは避けることにする。

ディルイーヤの中心地はワーディー・ハニーファ(Wadi Hanifah)と呼ばれる谷を挟んで広がっており、北側はAl Bujairi Heritage Parkと呼ばれる公園を中心にして、かなりの商業化が進んでいる様子で、アバヤやソーブに身を包んだ多くの地元住民で賑わっている様子である。

旧市街の建物は日干しレンガで作られており、壁も床も同じ茶色で風景を統一しており、新しい建物も同系色の石を仕上げ材として利用しているために、街全体がある統一感を持っている。北側の奥に位置する新しい建物と思われるモスクの脇をとおり、南に向かってあるいていくと、ゆるいスロープの先に横に広がるトライフ地区が谷の奥に見えてくる。いくつかの宮殿や公共施設が大きなヴォリュームとして点景としての役割を果たしているが、やはり同素材で街全体が作られることによるある種の美しさ、かつて移動手段が限られ、そこで確保できる素材によって建築がつくられていた時代に、世界の各地でそれぞれの地域に特色のある風景を作り出していた、そんな統一感のある風景にしばし見とれながら、折り返して建物郡の屋上に広がる庭園へと向かう。

よく観察していると、多くは子供をつれた女性たちのグループで、あちこちで走り回る子供たちに目を配りながらも、おしゃべりしながら散歩するアバヤ姿の女性たちが多く見られる。その中にも、ちらほらカップルらしき男女が、携帯でセルフィーをしている様子は、どこの国でも同じなんだと少しほっとする。

そんなこんなしているうちに、内陸部で大陸性の乾燥した気候であまり雨は降らないはずのリヤドであるが、突然空は雨雲に覆われ、ザーッツっとかなりの勢いの雨が降り出す。トランクに入っている傘を持ってこなかったのを悔やみながら、できるだけ濡れないようにとしているが、運転手も周りの地元の人も、あまり雨に濡れることを気にしていない様子。空気が乾燥しているので、一度雨がやめば意外とすぐに乾いてしまうのだろうか?と思いながらも、さらに雨脚が強まり、これはたまらんと近くのカフェに飛び込むことに。

折角だからとコーヒーを飲むことにするが、カウンターの上にも「Family Only」の大きな字。「大丈夫なのか?」と運転手に聞いてみるが、「気にするな」とコーヒーを奢ってくれる。店内はアバヤ姿の女性が多くいるために、風景の多くが黒く覆われている。コーヒーをすすりながら、その様子を観察するが、一人だけアバヤでもソーブでも無い外国人がいることを、ここにいる人たちはなんとも思っていないようである。

結局雨は一向に止む様子を見せず、キリが無いから「駐車場まで行って車を取ってくるからここで待ってるか?」と聞いてくる運転手に、「さすがにそれはハードル高いだろう・・・」と思い、一緒に駐車場まで行くよと伝え、二人そろってビショビショになりつつ、現代の首都リヤドへと戻ることにする。


行く途中で見かけた建設中の建物
現代的なデザインのモスク
地球の歩き方を手に一緒についてきてくれる運転手























Al Bujairi Heritage Park


今日は金曜日でファミリーデーということで、家族連れで賑わうコーヒーショップ

突然振り出した雨に濡れながら帰る人たち







リヤド動物園(Riyadh Zoo)



折角だからと、キング アブダラ パーク(King Abdullah Park)の北に位置するリヤド動物園(Riyadh Zoo)を通っていくことにする。タクシーの運転手はやたらと「今日はファミリーデーだから入れないよ」と言ってくるので、何かと思っていると、どうやらイスラムの教義にのっとり、未婚の男性と女性が同じ空間に居合わせるのを避けるために、ほとんどの公共の場は男性だけが入れる日か、それともファミリーデーで家族連れで入れる日かに分かれているという。

娯楽がないといえども、お酒も飲まず、公共の場での異性との出会いも制限され、いったい若者達はどこに出かけ、何をしているのだろうとますます気になりながら、少し休むためにとホテルに戻ることにする。


キング アブダラ パーク(King Abdullah Park)



金曜日ということで、午前中の市中心は驚くほどひと気が無い。せっかくだからとマスマク城(Masmak Fortress)の近くまで行ってみると、横の政府ビルの脇にはマシンガンを持った警護の姿。余計なトラブルに巻き込まれないようにとその場を離れ、ホテルに戻る途中でせっかくだからこの街の都市空間がどうなっているかを見にいくことにし、向かったのは市の東北に位置する都市公園。


アブドゥッラー(アブドラ)国王(King Abdullah)というのはサウジの元国王で、現在の国王であるサルマーン国王(King  Salman)とは異母兄弟の関係のあたるという。その元国王の名前を冠したリヤド最大の都市公園であるキング アブダラ パーク(King Abdullah Park)。


脇にはスポーツ施設を併設していたりして、市内からのアクセスもよさそうなので、きっと人でにぎわっているのだろうと思ったが、一人の姿もおらず、イスラムの国において金曜日の意味を痛感しつつ、さらに北に向かってもらうことにする。



アル・バトハ地区(Al Bathaa)


到着後、どうにも現金が無いのはいかにも心もとないと、念のためにと出発前の北京空港にて、いくらかサウジ・リヤルSR(SaudiRiyal)に両替をしておく。乗り継ぎのドバイの両替所で確認すると、日本円も中国元も問題なくリヤルへ両替でき、そのレートも北京よりもよっぽど良い。

国際色豊かなドバイ国際空港(Dubai International Airport)だが、サウジの首都であるリヤド向けの便の搭乗口にでは、すでに「トーブ」と呼ばれる足首まですっぽりと被る白の布の民族衣装の男性と、「アバヤ」と呼ばれる黒色の布をまとった女性の姿が多く見られるようになり、徐々に「異国感」が高まるのを感じる。

リヤドの玄関、キング・ハーリド国際空港(King Khalid International Airport)に到着すると、調べてきたように、むやみに写真を撮らない様に気をつけて、時間がかかるという入国審査の列に並ぶ。が、早朝ということもあったからなのか、びっくりするほど列は短く、その手前ではセルフィーをするアバヤの女性の姿がチラホラ・・・。日本人だと分かった入国審査官の男性は、「今度日本に桜を見に行くんだ」と嬉しそうに話してきて、入国審査も数分で終了。

「ん?」と思いながら、写真を撮っていると誤解を受けないようにと、携帯を出すのを避けながら荷物受け取りまでいくが、周辺には半袖のラフな姿で携帯を出してSNSに興じながら荷物を待つ人々の姿。思ったよりも早く出てきた荷物を受け取り、外に出るとクライアント手配のドライバーがボードを持って待っていてくれ、一緒になって空港の外へ。「車を回してくるから、ここで待っていてください」と言われるままに、車寄せで周囲を観察しながら暫く待つことに。

確かに乾燥した空気と赤土っぽい周囲の風景、そして何をしているのか分からない人たちがぶらぶらしているのは、異国に来たなという緊張感を与えるが、それでも思っていたものよりはいくらかレベルが低く感じずにいられない。それでも、油断しないようにと車で戻ってきた運転手に車内で、「ここらへんは写真は撮ってもいいものなのですか?」と尋ねると、「もちろん、もちろん。何なら止まりましょうか?」と言うので、それには及ばないが車内から流れる風景をカメラに収めつつ、まずは無事にピックアップされたことにホッとする。

ホテルに着き無事にチェックアウトを終え、せっかくの一日を無駄にしないようにとコンシュエルジュに「いくつかの観光地を回りたいので情報をくれないか?」と聞いてみるが、「あいにく今日は金曜日で、礼拝の為にどこも少なくとも午前中は開いてないですよ」と・・・

預言者ムハンマドが、聖地メッカに入城したのが金曜日だったため、イスラム教では金曜日を礼拝の日として安息日と定めているという。そのことをすっかり忘れ、少し前入りして街の様子を理解しようと思っていたが、すっかり予定が狂ってしまう。

それでも、まるまる午前中を無為に過ごすのももったいないので、ホテルでタクシーを手配してもらい、少しだけ市内を見て回ることにする。それに先立ち、ホテルのコンシェルジュに事前調査に基づくいくつかの項目を確認するが、「今ではそれほど厳しく行っておらず、半袖短パンでも問題ないですし、街中で写真を撮るのも何の問題もないですよ」とのこと。念のために今度はフロントで同じ質問を繰り返すが、返ってくる返事は同じもの。それでも季節柄もあり、長袖長ズボンは保ち、手配してもらったタクシードライバーに行き先を伝えるが、なかなか英語が伝わらず、聞いてみるとパキスタンから来ているという。

日本から持ってきたガイドブックを見せながらなんとか意思疎通を図り、旧市街の中心地だというアル・バトハ地区(Al Bathaa)を目指すことに。道中も、「今日は金曜日でお休みだから」と陽気に説明してくれる運転手。20分ほどで中心部に着くと、「ここで待っているから」とツンデレのようなことを言ってくるから、「一緒に行こう」と着いてきてもらい、「ここら辺はパキスタン・マーケットが広がってるんだ」という説明を受けながら、同じ商品を扱う同じ店が等間隔で並んび、おそらくそこに商品やサービスの差異は無く、ただただ関係性や値段の差で商いがされているのだろうという、非常にプリミティブな商売が広がる街区を暫く眺めながら歩くことにする。

ホテルのフロントで渡された市内地図。英語表記が無いため、ほとんど読めず。




パキスタンから来ているというドライバー