2016年2月5日金曜日

好古園(こうこえん) 中村一 1992 ★★★★★


---------------------------------------------------
所在地  兵庫県姫路市本町
機能   都市公園・庭園
庭園形式 回遊式庭園
作庭年代 1992 
作庭   中村一
---------------------------------------------------
日本の庭園100選  
---------------------------------------------------
姫路城の横に位置する日本庭園である好古園(こうこえん)。発掘調査で見つかったこの地にあった武家屋敷の遺構を生かし、9つの日本庭園ので全体が構成される巨大な庭園郡というものであり、その庭園設計は京都大学出身の造園家である中村一によるもの。その特徴的な名前は、江戸時代にこの場所に存在した藩校「好古堂」に因むとされているという。

元々の屋敷割りを生かすために、それぞれの遺構にそって築地塀によって仕切られており、突き抜けて次の庭にアクセスできることもあれば、一度先ほど入ってきた入り口から出て横の庭に向かうというように、初めて訪れる人には少々混乱する動線かもしれない。

造園が1991年というから、近代に属する庭園の一つ。今までそれなりに全国に散らばる名園と呼ばれる庭園をできるだけ見て歩いてきたが、その中でも郡を抜いて素晴らしいと思われる庭園の一つであろう。近代ということで、歴史上の多くの庭園設計の資料が揃い、研究が行われ、知識が培われている中で、見た目や技法に溺れることなく、それぞれの庭園の中を一歩一歩歩く人のその足元のデザイン。足を踏み進め、どんな素材のどの様な表面加工によって大地と身体を接触させ、そして自然を感じ取るか。どこで足元の素材を変化させ、視線をどのように誘うか。そこには何が見え、どんな空間が感じられるのか。その一つ一つ、すべてに設計者の心配り、先をいく気配りを感じられ、そしてそのすべてが心地よい。

その設計側の知識の豊富さ、想像力の高さ、実現する設計力の素晴らしさ。それが見事に自然と調和して、自然の中を漂いながらも快適さが身体の回りに漂って着いてくるような心地。

その設計側の心遣いもそうであるが、感動を呼ぶのは自然という増大するエントロピーを視覚的に一番見せ付ける風景に対して、自然性を保ちつつも不快にさせない程度に風景を整えている手入れの心配りの素晴らしさ。これだけの自然の風景を、これだけ美しく、かつ整えすぎずに保つには、一体どれだけの手間を人手と費用がかかるのか。かつ、それがいかにも「手入れしています」と前面に見えてこないように、黒子としてひっそりと隠れている。その謙遜さ。

運営管理が姫路市だと知るが、恐らく膨大な予算がかけられているのだろうが、それだけではこの風景は作れるはずもなく、そこに関わる人々が、その仕事とこの場所に誇りを持って毎日の手入れに向き合っているからこそ出来上がる、そんな素晴らしい風景なのだと納得する。

建築やランドスケープに関わる人のみでなく、ぜひとも多くの日本人に訪れてもらいたいと心から思える名園である。














































0 件のコメント: