2015年3月8日日曜日

ル・ランシーのノートルダム教会(Notre Dame du Raincy) オーギュスト・ペレ 1923 ★★★★


朝早くチェックアウトして、美術館視察の旅の最後の目的地であるランス(Lens)に向かわなければいけない。しかしせっかくパリに来たのだから、まだ訪れたことのないあるオーギュスト・ペレ設計によるル・ランシーのノートルダム教会(Notre Dame du Raincy) にどうしても行きたいと思いいろいろとシュミレーションをしてみる。

パリの中心部からだと地下鉄に乗って東に向かう鉄道駅まで向かい、鉄道でおよそ20分。最寄り駅からは歩いて15分の様であるので、頑張ればいけないことはないとまだ夜も明けぬ朝の6時に起床して準備をする。

念の為にホテルの受付で教会へと電話をしてもらうと確かに教会の人が電話に出てくれた。まだ夜のざわざわした雰囲気が残り、新しい1日が始まっていない静かな路地を早足で駆け抜け最寄の駅から電車に乗り、駅の改札もまともに機能していないパリの郊外の駅へ到着する。

ほんの少し外に出るだけで、そこには華やかなパリの風景とは違ったフランスの長閑な郊外の風景が広がる。爽やかな朝の空気に包まれながら、ゆるい坂道を登りながら徐々に見えてくる教会の姿を視界に捉える。

近代建築の始祖であるル・コルビュジェ。彼の爆発的な活躍があったのは彼に先立つ先人たちが新たなる次回の新たなる技術の可能性を熱心に探求し、その機が熟したのとコルビュジェの先見性が見事に一致したためであるのは間違いない。

その先人の代表格なのがコルビュジェの師でもあったオーギュスト・ペレ(Auguste Perret)。ローマ時代から使われていたコンクリートという素材を新しい時代の構造体の主役へと押し上げるための研究を重ね、いくつも新しい時代を示唆する建物を残した建築家である。

サント・シャペルに見られるように、ゴシックが成した歴史的な功績は、組積造であれば構造体として立ち上がり外部と内部と遮断してしまっていた壁に対して、柱に構造の役割を持たせてそれ以外は自由に開口部とすることで、内部に光の降り注ぐ明るい空間を加納としたことである。

古来より用いられたコンクリートという圧縮に強い素材に、鉄筋という引っ張りに強い素材を組み合わせることにより、細い寸法で柱・梁として空間を立ち上げるフレームを作り出すことが可能になるのではと鉄筋コンクリートを用いて様々な実験的建築を生み出してきた。

その到達点がこのル・ランシーのノートルダム教会であるのは間違いない。外部からはコンクリート造の思い表情だと見て取れるが、一度内部に入ると両面の壁は構造を担当する円柱以外は全てステンドグラスがはめ込まれ太陽の光が様々な色に変換されて内部に満ちている。

現代社会において世界のどこだろうと当たり前の工法として採用されるようになって鉄筋コンクリート構造。そのコンクリート打ち放し建築として最古の建築と考えられるこの教会。鉄筋コンクリートが新しい時代の新しい表現の代表者としてなるために、余計な装飾を取り除いて、この素材と工法がもたらすダイレクトな表現を採用しようと考えた建築家の意思を感じる佇まい。

わざわざここまで足を伸ばしたことに満足し、恐らく同じ様に多くの建築を志す者が立ち寄ったと思われる隣の果物やでいくつかフルーツを買い込み、チェックアウトに間に合うようにと駆け足で駅への坂道を下ることにする。


















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