2014年6月11日水曜日

城のある場所

城を築くということは、もちろん防御とか交易など様々な理由はあるのだろうが、その中には必ず居住地、自らの支配地の拠点となる場所として絶対に「心地よい」という理由はあったはずだと思っている。

つまりは城がある地域というのは、歴史の中で誰かに選ばれた場所であるということ。

ここは住まうのに心地がいい場所だ。
この場所は力を持っている。

などと誰かが何かポジティブな要素を感じ取り、「よし、ここに城と城下町を築こう」と決断されたに違いない。

しかも城を築いていた時代というのは、現代の様に「ここの土地が手に入ったので、ここの敷地に城を築こう」などというみみっちい話ではなく、広大な領地の中を歩き回り、土地に耳を傾け、場所の力を感じ取り、それを最大限に人工物である建築へと転換し領地を守り、人々にとって心理的にも視覚的にも中心となる城を作り上げていた時代である。

一番いい場所を、どれだけでも時間をかけて見つけることが出来た時間。それだけに、自然の力を感じ取る力が試された。

永く人が住んできた地球。その中で幾つかの場所が何かしらの理由があって選ばれてきた。城を見上げる我々は、その後ろに隠れる様々な理由を同時に眺めているわけである。

選ばれた場所があるということは同時に、決して選ばれることの無かった場所も数多あるということ。誰もがポテンシャルを感じることなく、誰もが心地よいと判断しなかった場所。そんな手付かずに取り残されていた場所に、現代人がやってきて、細かく切り刻み、そして開発を行っていく。

そう考えれば考えるほど、城のある街で育つことの豊かさを考えずにいられない。

城だけでなく、同じように何かしらの歴史の中で「選ばれた」という印となるものがあるのだろうと想像する。港にしても、市場にしても、様々な理由と様々な心地よさによって場所を人が発見し、手を入れていく。それが風景として次の世代に繋がっていく。

そう考えて、改めて自らの生まれ育った街、そして現在過ごす街が歴史の中で「選ばれ」てきた場所であるかを考えるざるにいられない。

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