2014年3月25日火曜日

「ゴールデンスランバー」 伊坂幸太郎 2010 ★★★

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第21回(2008年) 山本周五郎賞受賞
第5回(2008年) 本屋大賞受賞
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何かの本を読んでいると、ミステリーなんていう娯楽小説は、読んでも毒にも薬にもならず、読み終えてもなんら職業的向上、人生の価値に繋がらない。そんなものに時間を使うよりも、専門書に向かう時間を増やすべきだと書いてあるのを耳が痛くなりながら見たのも束の間、やはりリラックスする事も必要だと手にした一冊。

様々な賞を受賞し、映画化など何かと話題になっていたので、間違いなく娯楽として楽しめると信頼を置きつつも、本棚にほったらかしにしてあった一冊。読み始めてみるといやはや、何とも面白い。久々に止まらなくなりながら読み進める。

途中から、出てくるものは必ず後半で回収される布石だと思って読むことになる。印象的な花火。放置された車。飄々としたキルオ。それぞれは話の中でそれほど重要ではなく、恐らく思いついてどうしてもこれらを書きたいがために挿入したと少々テクニックが過ぎる感もあるが、それでも十分に面白い。先日の「ソロモンの犬」ほど、技に溺れる感がでるほどは踏み込んでいない。

タイトルの「ゴールデンスランバー(Golden Slunbers)」はビートルズの曲名で、直訳すれば「黄金のまどろみ」となるらしい。心地良い眠りとなるらしいが、大きなプロットがしっかりしており、緊迫感のある構図がちゃんと描かれ、そして登場人物の設定は明確に描かれている。その上、物語に新鮮さのあるトリックが使われており、何ともアメリカのドラマ的なプロットが実際に日本で起こってもおかしくないかなと最後まで読み切らせる力量はさすが様々な賞を取っただけのことはあると納得。

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