2014年2月6日木曜日

大神山神社(おおがみやまじんじゃ) 奥宮 不詳 ★★★


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所在地 鳥取県西伯郡大山町大山
主祭神 大己貴神(大国主神の別名)
神体山 大山
様式  権現造
社格  式内社(小)・伯耆国二宮・国幣小社
別称  夏宮
創建  不詳
機能  寺社
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長かったこの山陰の巡礼の旅。その最後、70個目の目的地となったのがこの大神山神社(おおがみやまじんじゃ)・奥宮。荒れた天候の為に、雪山登山の様にアタックする日をずらしながら最終日、レンタカーを返却するまでの早朝に訪れることになる。

ここ数日、何度も問い合わせをして雪の状況を聞いてきた大山町の観光案内所。


除雪車が入っているので大丈夫だという言葉を信じて大山へ向かう。大山の麓にある本宮からは車でやく30分。高度が高くなるにつれてやはり道路わきの雪の量が多くなる。その様子にビビリながらも途中いくつか完全にアイスバーンとなっている部分を、スタッドレスタイヤの凄さを実感しながらゆっくりと先に進む。

それでも何台か車が走っているので、少しながらの安心感を感じながら進むことおよそ30分。随分開けた場所に到着し、どうやらスキー場に着いた様である。車の流れに従って公営の駐車場に向かっていくと、入口が微妙に坂道になったおり、前の車がスタッドレスを履いていても空回りして少し後ろに下がってくる。これは怖いと、車間距離に気をつけながら、埋もれるの怖いからと入口近くに停める。

スキー場へ向かう人の流れに逆らって、やはりスニーカーではどうにもならなそうだと理解をし、スキーウェアのレンタルショップに入って「神社に参拝に行きたいのだが、長靴を貸してもらえないか?」と問い合わせるが、「うちはスノバだけだからね」となんともそっけない対応。

しょうがないなと先に進むと、右手に何度も問い合わせをした観光案内所。中に入って「奥宮に参拝に上がりたいけど大丈夫だろうか?」と聞いてみると、「途中の道は腰まで埋もれているので、いけないことは無いけど、その靴でいくとビシャビシャになりますよ」と言われ、「良かったらこれ忘れ物ですけど、使っていいですよ」と入口脇に置いてある長靴を渡してくれる。

「これは幸先いいぞ」と感謝を伝え、マップをもらって更に上に向かっていく。まずは大山寺に向かう参道。左右の民家の軒先は長いツララがぶら下がり、住民の方が必死に雪かきと雪下ろしをしている中を歩いていきながら、既に雪目になり視界がチカチカしながら氷になって滑りやすくなっている坂道を進んでいく。

マップを見てみると、まだまだ序の口というところ。これがあと1キロ以上も続き、そして戻ってくる道のりも考えると大変なことになりそうだと理解する。民家が途切れると道の除雪がされておらず、膝の高さ異常に積もった雪道を、他の誰かが踏みしめた足跡を頼りにひたすら足を前に進むだけになる。その歩き方は思った以上に体力を消耗し、少しでもバランスを崩すと倒れそうになりながら前に進む。

すぐに息は上がり、汗が流れ、蒸気が身体から立ち上り、なかなか近づいてこない大山寺の石階段を視線に捉えながら先に進む。なんとか石階段の下まで到着するが、上を見上げると、あそこまで上がって、さらに境内を進み参拝し、下りてきて奥宮へと進むのは恐らく体力と気力が持たないだろうと後ろ髪を引かれながらも大山寺を断念し、左の奥宮への道を進む。

恐らくこの雪の下には、立派な石で敷かれた参道が伸びていることだろう。この大神山神社の奥宮。本宮でも書いたように、元々は大山寺が奈良時代に創建され、一時は三千人以上の勢力を持つまでになった山陰の大寺院であった。平安、室町時代には天台宗の修験場として勢力を拡大したという。

そしてこの奥宮であるが、元々は大山寺の僧が修行の為に大山に登った時に簡易な遥拝所を設けるようになったのが始まりという。そして明治初頭の神仏分離令により、
大山寺から分離され、現在の大神山神社・奥宮となったという。

そしてこの大神山神社・奥宮には3つの日本一がるということで知られている。それが以下の3つ。

① 自然石を敷きつめた参道の長さが約700mで日本最長
② 社殿が国内最大の権現造りである
③ 奥宮幣殿にある白檀の漆塗りが日本一規模が大きく美しい

①については戸隠神社の参道の方がよっぽど長そうだなと思うが、大山の豊かな自然の中に鎮座し、生い茂る杉の老木に囲まれて、幽玄な雰囲気に包まれた神社である。恐らく雪の無い天候に恵まれた日の参拝なら、素晴らしい神域体験をできるのだろうと理解しながらも、腰まで埋もれている雪の中を視界が悪いなか足跡を踏み外さないようにと気をつけながら、垂れてくる汗が眼鏡に滴り、さらに視界が悪くなりながら、本当にたどり着けるのか心配になりながらなんとか先に進む。

雪で白く塗りつぶされた風景の中、距離の感覚もなくなり、一体どれだけ進んだのか、時々マップを取り出しても、一体どこまで来たのか分からずに、周囲には人の気配もなく、このままフラッと倒れたら本当に死んでしまうのではと思いながら、雪山で遭難事故が起こるのを理解して、「これはどこかで引き返さなければいけないかも・・・」と思いながら、なかなか決心ができずにまた一歩と先に進む。

すると少し先に写真を撮りに来ている地元のおじさんが道を塞いでいる。腰高以上になっている脇の雪に倒れない様にすり抜ける。「奥宮まで行きますか?」と聞くと、「奥まで行くの?まだかなりあるよ。危ないから、足跡だけ踏んでいきな。でないとズボッといくよ」とアドバイスをもらいながら、「ここから先はズボッといっても一人で誰も助けてくれないかも・・・」と不安になりながら、なんだか悲しくなりつつ、完全に引き返すきっかけを失いつつあるのを理解する。

ところどころ清流が流れ雪が溶けているので、足をとられないように気をつけ、滑らないように流れを飛び越える。そんなことをしているので、もちろん写真を撮る余裕もない。ただただ「鳥居よ早く見えてきてくれ・・・」と願いながら足を進めるのみ。

雪道で白く塗りつぶされ、雪目で距離感も失われ、時間間隔も無くなってきた。銀世界にただ一人。自然の厳しさを感じながら他には誰もいない世界。力尽きて声を上げても誰も気がつかないんだろうななんて思っていると、ふと視界の先に雪に埋もれた石の鳥居が見えた。少し気力を取り戻すが、視界に入ってきてからもそこにたどり着くのはかなり時間がかかる。雪の無いところと比べると恐らく4倍ほど時間がかかるのではないだろうか。

それにしても長靴を借りてなかったら軽く凍傷になっているだろうと思いながらなんとか鳥居をくぐる。マップを見ると、あと少しで神門と石階段が見えてくるはず。「あと少し、あと少し」と心の中でつぶやきながら、流れ落ちる汗も気にならないくらいに疲労しつつ足を進めてやっと神門をくぐる。その先に見えるのは石階段ではなく、白い斜面。その上に社殿の頭が覗いている。

「上までいっても、自分の力で今来た道をまた引き戻さなければいけないのか・・・」と絶望的な気分になりながらも、とにかく参拝をしてしまおうと胸の高さまでになった積雪の中を一歩一歩上にあがる。へろへろになり到着した境内は3mほどの積雪。拝殿前だけ雪をどかしてあるので、なんとなく本殿に参拝にできるようになっているが、日本一という権現造の全貌は拝むことが出来ずに、とにかくも参拝を終えることにする。

この社殿は、拝殿、弊殿、本殿からなる権現造りであり、日本最大の権現造りとされている。その拝殿左右の長廊は、両翼約50mと言われ、天候の良い日ならこの山深い風景の中、きっとかなり荘厳な風景であるだろうと思わずにいられない。

残念ながら全体を見ることもできなく、拝殿の後ろ側にあるという下山神社にはもちろん辿り付ける訳も無い。とにかくレンタカーを返す時間が決まっているので、ここで力尽きる訳にはいかないということで、汗が引く間も無く今来た道を降りていく。

流石に一度来た道だけあって、雪道を歩くのもなんとなくコツをつかみ、何よりも距離感をつかんでいるので精神的にも楽になり、相変わらず汗は止まらないが随分とスムースに参道を戻っていく。

恐らく行きの半分以下の時間で下まで戻ってきて、息も絶え絶えに案内状に戻って長靴のお礼を言う。すると「もう行ってきたんですか?へぇー」と後ろのほかの事務の方に、「この方、今奥宮まで上がってきたんだって」と興奮気味に伝えている。「それほど、この冬に参拝するのが珍しいなら、先に止めてくれればよかったのに・・・」と思いながらも、長靴がなければ行って来る事も出来なかっただろうと思いながら、汗だくになっているので風邪を引かないように、トイレを借りて中に着込んでいたヒートテックを脱ぎ、ジュースで一息入れる。

兎にも角にも、雪国の山の神社。冬には絶対行くべきではないという強い教訓を学び、時間が迫ってきたレンタカーの返却時間に急かされながら、大山から米子の街に下りていくことにする。

























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