2014年2月5日水曜日

みなとさかい交流館 高松伸 1997 ★


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所在地  鳥取県境港市大正町
設計   高松伸
竣工   1997
機能   客船ターミナル、事務所、浴場
構造   S造
規模   地上4階
敷地面積 5,080㎡
建築面積 1,120㎡
延床面積 3,500㎡
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凍てつくような吹雪から逃げるようにして、島根と鳥取をつなぐ鉄橋を渡り、再度戻ってきた境港。まさかと思って調べるとやはり境港市(さかいみなとし)と呼ぶらしい。

ナビに誘われて到着すると道沿いに建つ明らかに風景に似つかわしくないメタリックな建物。これに違いないと駐車場に車と入れると、どうやらここが「水木しげるロード」の拠点となる場所であるようで、いたるところに「ゲゲゲ」のキャラクターの看板が見受けられる。

建物は先ほど同様フェリー・ターミナル。それに物産館や観光案内施設、なぜか公衆浴場が併設されている複合施設。話を戻すがこの境港市(さかいみなとし)。南に隣接する米子市との合併を拒否し、独自路線を歩む事に決めたのだが、モータリゼーションのあおりを受けて衰退するなか、地元出身の漫画家「水木しげる」の知名度を利用して町おこしに着手し、1993年に800mの商店街に「ゲゲゲ」のキャラクターの銅像を拝した「水木しげるロード」が完成する。オープンと同時に運行開始されたJR境線の「鬼太郎列車」の人気を呼び、山陰有数の観光スポットへと成長する。

2010年には、NHKのテレビ小説において「ゲゲゲの女房」が放映され、それが「水木しげるロード」にも恩恵を与え、その夏には観光客数は悲願であった200万人を突破するというまれに見る町おこしの成功例である。

その流れを見て再度この建物の竣工年を見てみると、バブルは弾けたが「水木しげるロード」で観光客が訪れるようになってきたまさに上り調子の1997年。訪れた観光客が立ち寄れるような施設を増やせばより収益が・・・という思惑が透けて見えるような複合商業施設となった訳である。

建物はまさに「高松伸デザイン」と言わんばかりのメタリックでガンダム的なもの。それが内部の機能や空間になんら関係性があるかといえばそうでもなく、周囲の風景に何かしらの新しい刺激や価値を与えるかと言われればそうでもない、まったく意味の分からないものになっている。

とにかくインパクト。それが求められ、それが受け入れられた時代だと言えばいいのだろうか。雪の吹きつける冷たい山陰の冬景色の中、この建物を見上げているとなんとももの寂しげな気分になってくるのは自分だけではないだろうと思いながら次の目的地へと向かう事にする。






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