2014年2月5日水曜日

和鋼博物館 宮脇檀 1993 ★★


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所在地  島根県安来市安来町
設計   宮脇檀(みやわきまゆみ) 
竣工   1993
機能   博物館
規模   地上2階
構造   RC造
敷地面積 16,866㎡
建築面積 2,335㎡
延床面積 4,38㎡
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今回の巡礼の最後を飾るのに、どうしても見てみたかったのが霊性高き大山の奥深くに鎮座する巨大な権現造の大神山神社(おおがみやまじんじゃ)・奥宮。どのサイトを見ても、やはり物凄い神域感が漂っており、冬季の参拝は厳しいと思われるがここだけはなんとか実現したいと、昨日の夜も何度も関係観光案内所に問い合わせの電話をし、雪の状況と参拝道の状況を聞いてみる。



その結果、本日に予定していた大山への参拝だが、やはり昨日からの大雪の影響で神社までの山道もかなり凍結しており、除雪機が入ってはいるが危険であるに加え、駐車場から境内までの長い参道にはもちろん除雪など入る訳もなく、そこは人力で行ってもらうしかなく、いけないことは無いが腰までのの積雪なので、長靴などの雪山装備が必須とのこと。

今日中に天気が回復し、少しでも雪が溶け、明日の朝、レンタカーを返すまでの数時間に賭ける事にして、今日は市内でいけるところを廻ることにして、久々にホテルでの朝食をとり、昨晩見よう見まねでワイパーを縦にしておいた車は見事に数十センチの雪をかぶっており、ホテルが用意してある除雪用のブラシなどでフロントガラスに積もった雪などをかき、恐る恐る出発し向かう先は市内中心部から少し離れたところに位置する宮脇檀(みやわきまゆみ) 設計による和鋼博物館。

駐車場という案内板に誘われて入っていく駐車場はやたらと狭いのでは・・・と思いながらどこがエントランスか分からずに目の前の階段を上がっていくと、そこは美術館併設のレストランへの入口だったらしくもちろん閉まっている。

良くみると更に先に美術館の駐車場が大きく広がっており、再度車を移動させることに。広大な敷地に特徴的なファサードを持った建物に、これまた特徴的な形をした3つの屋根が飛び出している。

この美術館の名になっている「和鋼」とは「たたら製鉄法」という製法で作られた鉄のことらしく、この安来市(やすぎし)は鉄の積出港として栄えており、前進は日立製作所の工場付属の展示施設を市が譲り受けて正式につくることになったという美術館。

その美術館設計の指名コンペで宮脇檀が勝ち取って設計したというものである。鉄の美術館だけに、もちろんサッシュから、屋根、家具に至るまで鉄を使って設計されているという。

すっかり雪に埋もれた駐車場になんとも不思議なパターンが浮かび上がるのを面白がりながら建物にアプローチしていくが、どうやら今日は閉館日らしい。「事前の調査ではちゃんと開館日を調べて予定を立てていたはずだが・・・」と考えると、さきほど大神山神社・奥宮への参拝を明日にする為に、今日の予定と明日の予定を入れ替えたのを思い出し、それはしょうがないと暫く建物周囲を見渡してみることに。

さてこの設計を担当した建築家・宮脇檀(みやわきまゆみ)であるが、はじめその名前から女性建築家なのかと思っていたのを良く思い出す。大学在学中はむしろその作品と言うよりも、多く書かれたエッセイによって親しんだ建築家である。

ユーモアたっぷりのエッセイを多く残し、建築家が如何に多方面にわたって生活を楽しんでいるのかを良く教えたもらった様々な書籍。本人は1936年に名古屋で生まれ、その後東京芸大で建築を学び、大学院は東京大学に進学。その時に車で日本全国を2ヶ月駆けて回り、特に集落を見て回りそれが後にデザインサーベイへと繋がっていく。

作品としては、コンクリートの箱に木のフレームを組み合わせた「ボックスシリーズ」と呼ばれるものが有名であり、その中でも「松川ボックス」では日本建築学会賞作品賞を受賞している。住宅のディテールにも定評があり、「宮脇檀の住宅設計・・・」などと多くの設計におけるテクニックが書籍としてでている。

住宅単体に留まらず、住宅地として群の住宅の在り方にも多くの功績を残し、集合の在り方や、車と歩行者の共存の仕方、海外からクルドサックやボンエルフなどの考えを取り入れ、集合住宅の歴史の中で重要な位置を占める「コモンシティ星田」などを残している。

1966 もうびいでぃっく
1971 ブルーボックスハウス
1971 松川ボックス (日本建築学会 作品賞)
1991 コモンシティ星田ふれあいプラザ
1993 和鋼博物館

そんな宮脇の後期の作品といってよいこの美術館。

そんな宮脇檀の事務所出身の建築家と言えば、椎名英三や藤江和子があげられる。藤江和子といえば、数日前に見た槇文彦設計の島根県立出雲歴史博物館でも家具の設計を担当したデザイナーである。

恐らく内部をみれば、玄人好みの気の利いたディテールが多くみられることだと思うが、その分明日なんとか大山に上ってよい聖域を見られることを期待して次の目的地へと向かうことにする。






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