2013年10月9日水曜日

「いまどきの「常識」」 香山リカ 2005 ★


2005年に書かれているということは、こんな事をもう既に10年近く日本は繰り返しているのだろうとゾッとする。目次を見ただけでも、誰もが「あるある」とうなずきながら、何人もの顔を思い浮かべる事ができそうな内容。

その行動原理は社会を良くするためなどの大きな物語を背景にしているようことは期待できず、せめて自らの生きがいや、職能の向上に繋がるようなものであればまだ納得はできそうだが、読み進めていくうちに見えてくるのは限りない個のエゴ。自らのプライドのみを満足させる刹那的な行動原理。読むだけでも鬱々と心に滓が溜まる気分に陥る。

著者の書物を何冊か読み終え、再度今回手にしてふと思う。

それにしても全ての事象に、「こういっている人がいるが、ちょっと待てよ。それはおかしいんじゃないか?あまりにも盲目的になっているが、そういってしまうのはこういうことを考慮にいれてないのではん?」というパターンで書かれていく各章を見ていると、それが精神科医のものの見方なのかも知れないが、やや揚げ足を取るだけに聞こえてしまう。

それならば自分なりに議論に枠組みを一度与え、その中で自らの論点を明確にし、何かしらの前向きな提案をしていけばいいと思うのだが、決して構築的な結論は与えられず、それならば書物という形で世に問う必要があるのかどうかと思わずにいられない。それならブログでいいのでは?とも思ってしまうが、やはり書物という紙媒体にすることが重要なのだろう。

それにしてもこうして自らの専門分野を大きく超えて、知識人という立場で時事問題を横断的に意見を述べていくという、テレビの分かりやすいコメンテーター的な振る舞いはまだ分かるが、どうも同じようなテイストの本を数冊繰り返すと、今度こそ最後の一冊にしようと思わずにいられない。

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目次
まえがき


自分の周りはバカばかり――人間関係・コミュニケーション篇
/ 「あの人はバカ」と言う自分はバカじゃない
/世界の中心は自分
/悪いのは私ではない
/涙が切り札
/少年事件には厳罰を


お金は万能――仕事・経済篇
/結局、お金がものをいう
/現実には従うしかない
/自分らしい仕事をしよう
/ゆっくりした、ラクしたい


男女平等が国を滅ぼす――男女・家族篇
/男は男らしく、女は女らしく
/結婚しないと幸せになれない
/三世代家族が子どもを守る
/不倫は文化だ
/ゆとり教育は失敗だった


痛い目にあうのは「自己責任」――社会篇
/ すべては「自己責任」の結果
/「偉い人」には逆らうな
/競争には勝たなければいけない
/病気も障害も「負け組」
/インフォームド・コンセントは患者を救う


テレビで言っていたから正しい
/ノーテレビデーで子どもを守れ
/B型人間は自己中心的
/人は死んでも生き返る
/外国人は危険


国を愛さなければ国民にあらず――国家・政治篇
/「平和」や「反戦」にとらわれるのは頭が古い証拠
/ナショナリズムは普通で健全で自然
/何よりも「国益」優先
/過去にこだわるな
/軍隊を持ってこそ「普通の国」だ
/テロに屈するな
/平和のためなら死んでもいい

 あとがき
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