2013年6月1日土曜日

メルボルン Melbourne Day 3


昨日のうちに、以前から予定に組み込まれていた今日の夕方のパネル・ディスカッションは「パネラーが壇上でディスカッションをして、会場から募集した質問などを纏めてスピーカーに少しだけ振るくらいだから」と聞いていたので、すっかり解放感に包まれながら良い目覚めをすることができた。

昨日は味わうこともままならなかった朝食も、このイベントに向けて仕上ていたダイエットも一段落ということもあり、たらふく平らげ、たまたま横の席に腰掛けたジョージに「頑張ってね」と声をかけてコーヒーを味わう。何とも味わい深い。

といってもイベントは朝9時から始まり、見たかったキャサリン(Kathrin Aste)のレクチャーがあるので急いで会場に。スピーカーが集まっている前列周辺に席を取り、Landhausplatzなどランドスケープから良質な都市空間を作り出す彼女達の作品をプレゼンに耳を傾ける。 


次のセッションは、アメリカからバージニア(Virginia San Fratello)。彼女はRael San Fratelloの主宰者であり、3Dプリンターの素材のパウダーに繊維を混ぜてコンクリート以上の強度を持つ素材を作り出したりと、アドバンス・テクノロジーを使いながら、マテリアルの新しい可能性を試みている建築家。

次はフィリップ・ラーム(Philippe Rahm)。フランスのRahm Architectesの主宰者でバリバリの環境建築の一人者。風、光、気温、湿度など人が快適と感じる目に見えない要素を設計対象としてプロジェクトを進める建築家。

午後のセッションは昨晩のディナーで向かいになって、いろいろとオーストラリア建築業界の話を教えてくれたティム(Tim Greer)。シドニーでTonkin Zulaikha Greerを主宰する一人。如何にも世話好きな人のよいおじさんという感じで、「シドニーに行くなら知り合いの若い建築家にぜひ会ってくれ」と紹介してくれる。プロジェクトも一つの場所で長く建築に向き合っている姿勢が感じられる非常に良質のプロジェクトばかり。

続いては、ジョージ(Jorge Otero-Pailos)。コロンビア大学で建築を教えながら、建築とアートの曖昧な作品を作り続けている建築家。レクチャーは「ダークマター」と銘打って、大気汚染など目に見えないが建築を風化させる物質もまたマテリアルではないかと話を進め、フィリップ・ジョンソンの「ガラスの家」に漂っていた違う年代の臭いを香水にしたりというプロジェクトを紹介するが、「やはり頭のいい人は面白いな」と思いながらも少々の悔しさを感じる素晴らしいプレゼンテーション。

ここまでくると既に脳はクタクタだが、次が最後のセッションだと気合を入れる。

最後はマティアス(Matthias Kohler)。スイスの名門ETHの建築学部の学長を務め、Matthias Kohlerの協同主宰者でもある。ロボットを使ったデジタル・ファブリケーションの第一人者で2008年ベニス・建築ビエンナーレのスイス館のプロジェクトなど、ロボットとアルゴリズムを使っての建築の可能性を追求している相当面白い人。

やっと終わったと思っていたら、スピーカー全員が壇上に呼ばれ、4人のパネラーと一緒にテキーラを一杯飲まされ始まるパネル・ディスカッション。ナダー(Nader Tehrani)が統括しながら、今回のテーマ「マテリアル」という観点から話をし、かくスピーカーに話を質問を降ろうとするのだが、最悪なことにほとんど質問の内容が分からないまま一番はじめに質問を投げかけられるアンラッキー・・・

「参ったな・・・」と思いながら、自分なりの言葉を捜しつつ、なぜこれだけ世界の様々な場所で、このような色々な建築家がそれぞれに「マテリアル」の新しい可能性を見つけようとしているのか?それは皆が無意識のうちに、この数十年で建築分野の中で巨大な力を持つ「環境」という建築すら飲み込み国境すら越えていく大きな概念によって、新たなる建築と環境との関係性に目をむけ、それがその境界線を定義する「マテリアル」へと辿り着いているのでは?などと意見を述べていく。

一度答えておけば、もう質問は来ないだろうとタカをくくり他のスピーカーの質疑応答に耳を傾けるが、ネイティブでも理解するのに相当苦労するのでは?と思われるような英語の言い回しに、母国語でない人にとってはハンデが大きすぎるのでは・・・と思いながらもなんとかパネル・ディスカッションを終了する。少なからずの敗北感を感じながらもとりあえず無事にイベントを終了できてほっとする。

最後は「Closing Party」ということで、会場近くのバーで出席者や聴衆も含めて一緒にお酒を飲みながら、最後の交流を楽しむことにする。ティムに紹介してもらったシドニー在住の若手建築家と明日シドニーのオペラハウスの前での再会を約束し、自由時間が無かったためにほとんど見ることができなかったメルボルンの街並みを少しでもということで、妻と二人でこっそりパーティー会場を抜け出して、夜のメルボルンを散策する。





















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