2013年6月11日火曜日

守谷第一ビルヂング 林雅子 1963 ★


ここに何坪の土地が空いたからそれを購入して、できるだけ面積の広い家を建てたい。

それがほとんどの現代人の建築への開始点。

それに比べて、好きなだけ時間をかけて、好きなだけ土地を探し、好きな場所に建てることができた時代。そして下手すれば何百年もそこに建ち続け、何世代、何十世代の人々から護られ、愛されてきた神社や城と比べて、一体どんな現代建築が同じ土俵で戦って、この建築は見に行きたいという魅力を持った現代建築がどれだけあるか?

そのレベルで対抗できる強度を持った建築がどれだけ生み出されたか。

その強度を持った建築を作り出すことができたのは、どれだけ数少ない建築家だったか。

そんなことを考えると、名前が挙がる建物、頭に浮かぶ建築家の名前はそうそう多くは無い。

丹下健三。村野藤吾。前川國男。池原義郎。

それらの名前に並ぶ期待感を抱かせてくれるのが林雅子。

彼女の作品は今まであまり見ることが無く、また簡単に足を運べるような場所に現存していないということも手伝って、かえってそそられる存在でいた。

そんな訳で、その林雅子の作品が、コンバージョンされてこの長野の中心地に残っているというので、ぜひともと足を運ぶことにする。

守谷第一ビルヂングというコンクリート打ち放しのオフィスビルが、一部を残され前面の低層の商業施設と、後ろに中層のオフィスビルとしてコンバージョンされた様子である。

前面の壁面は一面が蔦で覆われすっかりグリーン・デザインのようになっている。

オリジナルの建物を残したからこの前面の広場部分が豊かになっているかといえば、まったくそうは感じることができず、あくまでも有名な建築物なので社会劣化にも関わらず保存しようという意向が大きかったのかと想像する。

使われ、愛されることで生を繰り返すことができるのを見せてくれる日本の神社の建築たちを見た後だと、こうして記号として残される現代の建築の姿は、新しい生を作り出すこともできずにただただ時間を引き延ばされたような気がして、どうにもしっくり来ない感じを受けながらこの地を後にする。




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