2013年4月13日土曜日

希少動物

妻のかつてのクラスメイトで、家族ぐるみで仲良くさせてもらっている夫婦がランチ・パーティーをするからといって誘ってくれた。

その彼女はスペイン人の弁護士で、旦那さんはドイツ人の建築家ということもあり、たまに食事に出かけては、建築談義に花を咲かせたりしているのだが、春めいてきたので、共通の知り合いなど20人近くを自宅に招待し気持ちのよいテラスなどをつかって思い思いの午後を過ごそうということらしい。

大きなコンペが進行中で、週末も関係ない生活に入ってしまっているので、当然のごとく、ワインを片手にワイワイと日差しの気持ちのいい午後を過ごすなんてことはなかなか難しいのだが、そういう場にはできるだけ二人で行きたいという妻の意見も聞き入れて、30分だけだがお邪魔することにする。

「あらあら、これはお洒落なおうちだね。」と足を踏み入れた瞬間に分かるセンスの良さ。インテリアに関しては建築家である旦那さんが主導権を握っているらしく、かつてスペインで自分の事務所をやっていたというだけあって、大きな打ち合わせテーブルと椅子はジャン・プルーヴェの作品。壁には去年のアートフェアで購入したという日本人作家のアート作品。ドイツ人らしく無駄なものが一切見えてこない綺麗な配置。これは我々も住空間に対する感受性を少しは高めていかないと・・・とやや反省。

そんなこんなしているうちに、顔見知りの友人もちらほらやってきて、一緒に来ている友人を更に紹介してくれる。

現在進行中のコンペの仕事がまったく終わりそうにも無いので、当たり前の様にこの週末も出勤して作業に当たらないといけないので、滞在できる時間は30分と短く、少ない時間の中で、できるだけ多くと食事をほうばりながら紹介してくれる知り合いと話を弾ませる。そんな中の一人にこんなことを言われる。

「中国人も海外に行くとそうだけど、日本人は北京に沢山いるけれど、皆自国民同士で固まってしまっているからなかなか出会う機会が無い。だからこうして出会えるのは結構希少な機会だと思う。」と。

なるほどと思う。仕事の忙しさと、そのスケジュールがあまりにも読めないこと、そして日本企業ではなく外国人の沢山いる中国の会社という環境と合わさって、昔からの知り合い以外の日本人ではほとんど知り合いと呼べる人もいない現在の我々夫婦。

それでも何人かの気の合う外国人の友人がいてくれるので決して寂しい思いをすることはないのだが、仕事や語学学校、そして知り合いの外国人の友人に誘われていく食事会やパーティーなどでも出会うのは沢山の国籍の人間がいるけれど、確かに日本人の人にそういう場で出会うことは今まで無かったなと改めて気がつかされる。

中華街を作って海外でも外から分かる形でコミュニティを形成する中国人と異なり、その場その場に浸み込むように馴染んで見えなくなるように生きるのが日本人だとかつて読んだ本に書いてあったが、ここでも日本人は希少動物ということだろうか。

こんな北京でどこかで同じ様な日本人に出会いたいと思いながらも、漂うようにして時間を過ごしている日本人に会えるといいなと思いながら、時間オーバーということで、妻を残して事務所に向かうことにする。

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