2012年11月3日土曜日

「風をつかまえて」 高嶋哲夫 2011 ★


豊かな自然が広がる北海道の地方都市。なんともほのぼのしたその風景だが、そこに生きる人にとっては「何もない」ということに他ならない。「観光」だけが望める産業であるならば、「何か」がなければ人は来ない。

「脱原発」が叫ばれる昨今。のどかな自然の中にのんびりと白い風車が羽を回す。そんな新しい日本の田舎の風景を再生エネルギーのアイコンで呼び起こそうとする戦略。その矢面に立たされるのが小さな町の鉄工所。

一度は周り、そして嵐に吹き飛ばされるブレード。いつの間にか引くに引けなくなり、ものづくりのプライドが、町の為にではなく、自分たちの為により専門的な風車作りへと駆り立てる。

地震、津波、嵐、原発と、自然の驚異とエネルギーの恐ろしさを描き続けてきた作者が提示する新しい日本の風景がちらっと見えるようなそんな一冊。

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