2012年9月22日土曜日

「Footnote」ヨセフ・シダー ★



footnote :脚注; 補足説明

つまり、本文中では理解されないだろうとする部分に、枠外にて補足説明を行う文章のこと。

タルムード(Talmud)とはユダヤ教の宗教的典範で、中世から現代に至るユダヤ人の精神文化を知る重要文献らしい。

Israel Prizeというのは、イスラエルで最も権威ある章で、毎年、文化や科学の分野で特筆すべき貢献を成し遂げた人に送られる賞で、村上春樹が受賞したエルサレム賞とは違うので注意すべき。

イスラエルという、グローバル世界においてもなお、異国でありつづけることのできる遠い国なので、上記の基本知識を確認して振り返らないと、なかなか理解が難しい。

それでも描いている内容は、同じ分野に生きる父と息子。堅物の父と闊達な息子の性格を反映するかのように、専攻分野への取り組みの姿勢もまったく違ってくる。

「世間に認められなくても、自分の研究はユダヤの文化にとっては大きな意義があるんだ。」という頑なな意志の下に隠されていた、それでも評価されたいという研究者としてのエゴ。それがあるきっかけによって大きく曝け出されることになる。

そしてその裏側には、父を研究者として尊敬する息子と、それでも一人の男としての蔑みの眼差しが同居し揺れ動く感情。

fortress:要塞、堅固な場所

の一言から、それこそ研究者の洞察力と直感により、決して開ける必要の無かったパンドラの箱を開けてしまい、恐らく今後死を迎えるまで、誰かに語ることも無く、ただただ一人でその猜疑心と向き合うことになるだろう老いた男の姿。

見終わってから冒頭のfootnoteの意味をどうにか探そうとするが、脚注という暗喩はどこにも見つからず、恐らく「足元に散らばった満々という紙切れ」という意味でのfoot-noteの方が正しいタイトルなんだと自らを納得させる。

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第84回アカデミー賞外国語映画賞ノミネート
2011年カンヌ国際映画祭脚本賞受賞
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