2012年7月7日土曜日

天壇 (てんだんこうえん 天坛公园) 1530 ★★★★★




「スケールの大きな風景が見たい」

という妻の要望に沿って足を運んだのが天壇 (天坛 tiān tán)。言わずと知れた北京の歴史的スポット。紫禁城(故宮)、万里の長城、そしてこの天壇。それが風水都市北京を代表する歴史的風景であり、歴史的建築。

良く言われるように北京には九壇八廟(jiǔ tán bā miào)と呼ばれる歴史的に重要な位置を占める9つの壇と8つの寺社がある。その壇を並べると下記の様になる。

天壇(天坛) 別称を園丘壇(圜丘坛 yuán qiū tán)
地壇(地坛) 別称を方澤壇(方泽坛 fāng zé tán)
日壇(日坛) 別称を朝日壇(朝日坛 cháo rì tán)
月壇(月坛) 別称を夕月壇(夕月坛 xī yuè tán)
祈穀壇(祈穀坛 qí gǔ tán)  天壇内に位置する
先蚕壇(先蠶壇 xiān cán tán) 北海公園内に位置する

壇とは明清時代の皇帝が神を祀った場所である。古来より天を治める「天帝」に対して、地を治める天帝の子「天子」としての皇帝が君臨してきた中国。そしてその天子が治める中華の国には天子が天帝と交信する特別な場所が設けられ、それは地上から数段高く、少しだけ天に近い場所として作られた「壇」。

四季折々だけでなく、様々な表情を見せる自然としての天。その天と少しでも交信し、この地を治める力を授かろうとして天子は森羅万象をつかさどる、天、地、日、月など様々な神達と交信する場をそれぞれに設けることになる。そういう訳で北京で見ることができる多くの壇はその悠久の歴史の中でも極めて貴重な意味を持つ場所である。

その中でも最大にして最上に位置づけられたのがこの天壇。中国語表記では天坛(tiān tán)と記され、様々な説があるようだが、1530年の明王朝時代に地壇と共に建設され、紫禁城(故宮)を真ん中にして南東に天壇が、北東に地壇が配された。

天壇と地壇は様々な意味で対を成し、形状も「天は円、地は方」という古代思想に基づき天壇は円形、地壇は方形とされている。アプローチもまた対を成し、真ん中に位置する紫禁城(故宮)に向かってアプローチするかのように、南に位置する天壇は南から入り、逆に地壇は北から入る様に設計されている。

更に「天は陽、地は陰」という陰陽思想に従い、天壇内の階段、柱など様々な要素は奇数(陽数)で構成され、地壇は偶数(陰数)で構成されている。

構成としては、南の入口から入っていくとまず現れるのが、九壇の一つに数えられる天壇、いわゆる園丘壇(圜丘坛 yuán qiū tán)。こここそがこの天壇公園の中心場所。皇帝が天を祀るための儀式を執り行い、「天は円、地は方」にそって円形に作られた台が3段連なり、その中心に立ち空を見上げると、何かが空から降ってくるような感覚に襲われることになる。

毎年太陽の力が一番弱まり、明日から復活の期間に入る冬至の日に、ここで豊作を祈る儀式を行い、同じく雨が少ない年は雨乞いを行ったと言われる。因みに階段や欄干なども陰陽思想でいう最大の陽数である9とその倍数を元にして設計されているといい、壇の直径を合計すると45丈といい、どれだけ古代の設計者が数字を崇拝していたのかを思わされる。

その欄干(手すり)の数は、下の段で180(9x20)、真ん中の段で108(9x12)、そして上の段で72(9x8)となりそれぞれが9の倍数。しかもそれらを足すと360と陰暦の日数となるという。まさにレックス・ムンディ。中華中毒の内容がうっすらと頭の中で蘇る。

うだるような暑さのもと、壇を下りたところでおじさんたちが声を大きく張り上げて売っているアイス。北京で何処でも売られているベストセラーとも言えるアイスは1元だというので、妻と二人で雨乞いの代わりにアイスで水分を補給しながら壮大な風景の中を更に北上する。

すると現れるのが皇穹宇と呼ばれる歴代の皇帝の位牌をふだん安置しておく建物。円形の段の上に円形の建物がのっている。その周りを取り囲むのも円形の壁であり、その壁にそって囁くと反響の関係で60m先まで声が届くといわれる回音壁。至るところで大声で壁に向かって喋っている中国人の姿を見ながら、「その大きさなら反響しなくても十分聞こえるだろうな・・・」と思いながら更に北に。

強烈な軸線を北で受け止める建物が九壇のもう一つの壇である祈穀壇(祈穀坛 qí gǔ tán) 。壇であるのでもちろん皇帝が何かを祈る場所。では何を祈るのかというと、その字から見て分かるように五穀豊穣を祈り、いつ祈るの?というとなると正月の上辛の日(旧暦1月の最初の日干が辛の日)だという。ここに関してはかなり厄介な言葉が沢山出てくるので深追いしないことにする。

高さが38mというかなり背の高い建物が3段の円形の段の上に建っている。段を上がる階段中央には石彫りが施されており、鳳凰、龍、雲という3つが用意されている。中も見所沢山であるが、流石に炎天下にこれだけだだっ広い場所を石畳の上を歩き続けると既にヘトヘト。

「スケールの大きな風景が見たい」という要望が十分に叶った妻も満足げな様子で、世界遺産に登録されるのも納得のここでしか見れない風景だと再認識する。東側の出口から出てその目の前に位置する红桥市场の屋上に上って再度広い広い天壇を暫く見下ろすことにする。






園丘壇












回音壁


皇穹宇













祈年殿














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