2011年10月12日水曜日

H23 一級建築士製図試験 「介護老人保健施設」

専門職に就く人は、日常業務に追われながらも、日々更新されていく技術や法律、社会情勢を片目で追いながら、マーケットの中での自分の位置を確保していかなければいけない。建築家もそんな中の一人であるのだろう。

何十年前に資格を取得して、その当時の技術や知識だけで今も営業を続けていく。そんな状況を避ける為に、各業界で様々な講習会などが開催されるのだろうが、やはり日々の業務の内容やその人の情報へのアンテナの感度によって、耳に届く情報は大きく違ってくるであろう。

新しい工法や技術、建材や法規など追い出したら際限なく、それだけで一日はあっという間に終わってしまい、なんとか定期的に雑誌や同業者、インターネットなどから自ら情報を収集し、時代にひっついていこうと皆必死に日々を過ごすこととなる。

専門職の技能レベルがこのように曖昧になってきている中、ではどのレベルが最低限プロフェッショナルとして超えている必要があるか、というのが国家資格である一級建築士試験とになるだろう。

年々変化する社会情勢と建築業界を反映して、毎年一度行われる試験には、現時点で建築家として必要だと思われる知識と技能を求める試験問題が出される。逆にそれを毎年追っていくことは、現在社会での建築の流れをよく理解する助けとなる。

そんな一級建築士試験の二次試験である製図試験が今年も先週末に行われた。今年の課題内容は「介護老人保健施設」。まさに時代を現すプログラム。

特別養護老人ホームなどの終身的に介助を行う施設と違い、あくまでも自宅での生活の復帰を目指すもので、家庭的な雰囲気を有する施設である必要があるという。

そんな事情を反映して、短中期の滞在の為の療養室と機能訓練室がメインをなり、療養室には近年ユニット型なる10人以下のユニットを中心としたものも多くなってきており、そのタイプによって各室の入所者毎の必要床面積が異なったり、廊下の必要幅が異なったりとするという。更に便所にブザーや、浴室に特別浴槽の設置が必要だったりと、特別な機能を持つ施設ならではの要項などもある。

それら建物の機能に対する知識とは別に、設備機器に関する知識も要求されて、単一ダクト方式や空冷ヒートポンプパッケージ方式だったら、それぞれ熱源機や屋外機設置の為のスペースが適切か、また各居室との組み合わせや全体の省エネ計画から見ての要点なども記述しろと求められる。

更に加え、環境への配慮も求められ屋上緑化による蒸散作用や、外壁面への熱線反射塗料塗布による蓄熱低減。外部サッシにはLow-Ehu複層ガラスを使用し熱線反射と断熱性の向上を目論み、換気設備は全熱交換器を採用し冷暖房負荷を低減する等、結構細かい事まで配慮していく必要があるという。

そんな内容をざっと見ていくと、足の裏の米粒が取れた3年前と比較しても、建物の機能以外の内容はそこまで変化していないかなという印象。

来年は一体何だろうと頭を巡らせながら、また日々の中でのアンテナを伸ばして日常に戻る。

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